庭園長のガーデニング・エトセトラ(28)~ムーンライトガーデニング~<

月は、約29.5日周期で満ち欠けをくりかえしています。
このサイクルを「月齢」と呼んでいます。
こうした月のリズムを、昔から人々は農作業や祭事や
暮らしに活かしてきました。

私たちガーデナーにも、月齢を取り入れた「農事暦」は
大いに参考になるのではないかと思います。

また、潮の干満のくりかえしには地球の自転が関係し、
潮の干満の高低差には月の引力(重力の強弱)が
関係しています。
新月か満月には、月・太陽・地球が一直線に並び、
高低差が大きい大潮になります。漁業にも関係が・・・

さて月齢は、植物の樹液の流れにも関係があります。
満月には、月の引力で水分は上部へ、
新月には、水分が下部に集中します。
月の引力の強さが、植物の樹液にかかる圧力の
変化に関連しているのです。

さらに、満月には生殖生長を、新月には栄養生長を、
より促進させる期間でもあります。

栄養生長とは、植物が葉や茎などの栄養器官を
増大させる生育段階のこと。
生殖生長とは、花芽を形成して開花させて
種子をつくるなど、次世代の生育段階のこと。

剪定も、二十六夜から新月の間に行うことにより、
樹木の腐敗を防ぎ、剪定痕の修復が早まるとか。
接ぎ木も上弦の月の3日後から満月の3日後の
水分が上部に集中している期間に行うと
活着がよいとされています。

光合成に太陽の光エネルギーが必要なのと同様に
月にも大きな役割があります。
ガーデナーも知っておくべきムーンパワーですね。

9月23日(火)は、秋分の日。
昼夜の長さがほぼ同じになる日です。
「国民の休日に関する法律」では、
❝自然をたたえ、生物をいつくしむ日」
と定められています。知っていましたか。

これから徐々に日が短くなり、
夜が長くなっていきます。
空気も澄み渡り、月が冴え冴えと美しく輝く季節。
本格的な秋の到来です。

夜空の月を見上げてみましょう。

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)

庭園長のガーデニング・エトセトラ(27)~日本の美意識=わびさびと、美しき経年劣化=パテイナ~風化の美学<

私たちの美意識って、どのように培われてきたのでしょうか。

幽玄、侘び寂び、陰翳礼讃、静寂、余白の美、暗示、簡素・・・
完全さよりも、そこに至る過程や刻の流れの痕跡こそが美・・・
そういった、日本独自の感性がベースにあるように思えます。
いいかえれば、不完全さの肯定であり、ときを味方にした、
風化の美学ということでしょうか。

フランスなどヨーロッパには、❝パティナ❞という言葉があり、
「美しき経年劣化」とか「古色」などと訳されます。
ものの表面に、歳月を経て現れる自然な変化や風合いのこと。
それは、ものたちが生きてきた、ときの流れの証・・・。
ヨーロッパのアンティークにも、風化の美学があるのです。

古いものにこそ価値があるという文化、
ともすれば現代の日本人は、新しいものや若さに価値を見出し、
古いものや年齢を重ねた人たちを軽視しがちです。

人それぞれに重ねた時間があり、
エイジングやヴィンテージのアイテムは、
独特の深み空気管感与えてくれます。

完璧じゃないからこそ、美しい。
新品じゃないからこそ、愛おしい。
よい歳を重ねたからこそ、尊い。
アンテイークなものもひとも、味わい深い。

そんなことを想う「敬老の日」です。

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)

 

庭園長のガーデニング・エトセトラ(26)~家+庭=❝家庭❞という言葉の語源<

「家族」の居場所が「家庭」であり、
「家庭」は、「家」と「庭」から成り立っています。
家と庭がある場所こそ、家族の居場所なのかも…。

「家庭」は、庭がなければただの家=ハウス。
家に庭があることではじめて住まい=ホームになるのかも…。

建築家は、家のなかから庭という「そと側」を意識し、
ガーデナーは、庭から家という「うち側」を意識します。
でも理想は、共同のプロジェクトであるべきなのかも…。

家と庭をトータルで考える住まいづくりが、
自然との調和やつながりを豊かにし、
自分たちの暮らしを、四季折々、快適に彩ってくれる
のではないでしょうか。

日本の庭園には「ワビいる」「サビいる」という言葉があります。
年代を経ることによって成熟していく「風化の美学」…。
家族の成長と同じように、家も庭も変化していくもの。
ガーデナーには、「時間のデザイン」という視点が必要です。

日々の暮らしのなかで、庭の手入れを、体を動かすよい機会と
とらえ、健康的な習慣としてライフスタイルの一部にすること。
早朝の庭仕事で土に触れ、植物の生長を見守るひとときは、
忙しい日々のなかでの生活の句読点。幸福なおうち時間を
よりおだやかで豊かなものにしてくれるはずです。

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)

9月8日は、❝皆既月食❞の日。<

本日は晴天なり!!! 今宵は、❝皆既月食❞日和です。

9月7日の夕方に昇った満月が、日付けが8日に変わるころ・・・
午前1時27分に欠けはじめます。
8日の未明から明け方にかけて繰り広げられる天文ショー。
赤銅色に輝く月を愛でてください。
さて、月のウサギはどう見えるのだろう。

起きていられるかな。

月食は天体望遠鏡がなくても肉眼で充分楽しめるので、
西の方向の見晴らしのよい場所を確保して、スタンバイ。
完全に月が地球の影に入る皆既状態は、
午前2時30分~3時53分までです。

起きていられるかな。

そして8日の未明に皆既月食が終わり、沈んだ月が
夕方再び西の空から昇ってきたとき、すぐそばにみえる
明るい星が土星です。環も見えるといいですね。
9日の午前2時ごろ、確かめてみてください。

起きていられるかな。

月食のときに、満月が赤銅色になるのはなぜでしょうか。
地球の大気のなかを太陽光が通過するとき、その光は、
大気によって屈折して月まで届いて、ほんのり照らします。
そのとき、波長の長い赤い光は散乱されにくく、
月面を照らすので、赤っぽくみえるのです。

百聞は一見に如かず。

起きていられるかな。

 

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)

庭園長のガーデニング・エトセトラ(25)~ガーデニングのスマート・テロワールをめざして~<

❝スマート・テロワール❞とは、地域の特性を活かしながら、
持続可能な未来をめざす新たな概念。
スマートとは、「賢い」「無駄のない」の意。
テロワールとは、フランス語で「土地」「特徴ある地域」の意。

地域特有の風土や景観、品種、栽培法などを育み、
安心安全な地産地消の循環型自給経済圏を築いていくこと・・・。

地域内での物質循環、産業循環、経済循環が
可能な仕組みを追求していくこと・・・

住民の知の連携が織りなす、固有の美しさと
豊かさにあふれる農村をめざしていくこと・・・。

私たちガーデナーが属する農業のカテゴリーは、
主に「園芸農業」または「園芸サービス業」。
農業を核とした豊かな地域づくりは、
私たちガーデナーの目指すべき未来でもあるのです。

豊浦地域では、耕作放棄地や山林を活用して、
10年以上前から「南半球プランツ」という
新たなカテゴリーの、温暖化にも対応した植物群を栽培し、
花卉(鑑賞用に栽培される植物全般)としても注目を集め、
全国各地の市場やナーセリーに出荷している「響グリーン」があります。

南半球、オーストラリアの海岸性気候に似た、響灘エリアの
気候風土に着目し、オーストラリアやニュージーランド、
南アフリカなどに自生する花木を地植えや温室で栽培。
いちはやく、独自の栽培技術や剪定技術を構築してきた、
リーダーの田中さんを中心に、ノウハウの共有化を実践。
みなさん、とてもなかがいいのもすてき・・・。

環境にやさしいオーガニック栽培を志向するとともに、
響灘の水産加工から排出される海の残渣や、
農業から排出される、稲わらやもみ殻など野の残渣、
近隣の乗馬クラブから排出される馬糞堆肥などを
原料とし、有用微生物の力を借りて発酵させた
オーガニック完熟肥料を使用して栽培することで、
地域内循環型の農業の実践をも実現しています。

 

南半球プランツという高付加価値植物によって、
経済的にも潤うことで、次世代の担い手をも育成。
まさに持続可能な農業を推進中のみなさんを、
私は、ほんとうにかっこいいと思うのです。

まだまだローカルではその活動が知られていなくても、
全国的には高い評価を得ている人々・・・。
当園でも、その輪のなかの一員として、
南半球プランツガーデン&トレイルを構築。
その成長を楽しみながら、活動の中核エリアとして、
南半球プランツのドライ素材を使用した作品づくりを行っている
ボタニカルアーテイストさんたちともつながりながら、
今後の豊浦エリアの新たな可能性を広げていけたらと思います。

オージープランツを代表する花木のひとつ、
グレビレアの花言葉は、
「燃える熱情」「平和」「あなたを待っています」・・・

地元豊浦の❝響グリーン❞のグループのみなさんの情熱が
未来に、大きく花開き、結実しますように!

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)