庭園長のガーデニング・エトセトラ(5)森の誕生に学ぶ<

森って、よく考えたらなんだろう?
森と林のちがいって、どうなんだろう?
森と杜は、どうちがうのか?

森にまつわるエトセトラ・・・
意外に、説明しようと思うと難しいことに気づかされます。

森と聞いて、ほとんどのひとが思い浮かべるのは、
樹木が生い茂るみどり豊かな、特別な場所の風景。

国語辞典では・・・
森:大きな木がたくさん茂っていて、薄暗くなっている所。
林:広い範囲に木が多数生えた所
もり:森・杜
広辞苑では、・・・
森:樹木が茂り立つ所。
林:樹木の群がり生えた所。

❝はやし❞と❝もり❞の語源は、❝生やす❞と❝盛る❞だとか…
みどりが生え、みどりがやまもりになる光景がうかんでくる…

深く暗い森は、ひとりで進むにはすこしこわいけれど、
明るくかぐわしい森なら、どこまでも足を踏み入れてみたい…
もともと私たちの祖先は、海から森をめざした
森のひとだもの。DNAが、海も、森も、求めている。

そもそも、森が生まれるスタートラインには、
地球という星に、水が発生したことにあるのだから、
それは、わたしたちの産湯でもあり、ゆりかごでもある。

だから、森の庭園・リフレッシュパーク豊浦から見える
森も海も、いとおしい。
必見の風景・光景である。

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)

 

 

庭園長のガーデニング・エトセトラ⑷ みどりのない未来はない<

植物は、みどりは・・・・
ひとや動物が、活きいき生きていくために、
たくさんの恩恵をもたらしてくれています。
たとえば・・・

●生態系のベース
植物こそが、地球の生態系を支えてくれています。
植物が光合成を行うことで、あらゆる動物が
食物を得ることができるのです。

●環境のベース
枯死した植物や、動物の排泄物や死骸などは、
土の中に生息する微生物などの生きものによって
分解され、土に還っていいきます。
有機物から無機物へ、そしてまた有機物へ・・・
このサイクルこそが、環境のベースです。

●生命のベース
ひとも、地球という生命の一員です。
地球の豊かな自然、生物の多様性などがあるからこそ、
わたしたちは生きていけるのです。
つまり、土・水・空気・光を含む地球環境そのものが、
生命をはぐくむ星=the nurturing planet。

具体的には・・・

●空気の浄化:光合成によって、二酸化炭素を吸収し、
酸素を放出します。
●温暖化の抑制:二酸化炭素を固定することで地球沸騰抑制し、
気候や温度を、調節・安定化します。
●大気汚染物質吸収:窒素酸化物やイオン酸化物等の吸収。
●食料の供給:豆や穀類、野菜や果物などが命をつなぎます。
●薬の原料:植物に含まれる成分によって命や健康を守ります。
●木材や繊維の利用:家屋、家具、衣類、紙などの原料
●ストレス軽減:花みどりを観たり触れたり感じたりすることで、
緊張や疲労などを軽減してくれます。
●セラピー効果:花や葉の美しさや香りによる感動や癒し
●国土の保全:土壌の浸食防止作用や、水分調整作用等があります。

このように、みどりの効用は多彩です。
わたしたちがつくる庭も、立派なグリーンインフラ。
つねに身近な自然の変化に敏感になり、
できるだけ生態系や自然に負担をかけないことも、
ガーデナーのたいせつなライフスタイルだと思うのです。

開高健は、植物を含む自然を頻繁に描写し、
人間と自然のかかわりを深く追求した作家です。
最後に、彼のメッセージを紹介します。

身近な生物が安心して棲めないところには
人間も住みづらい、
ということはいろいろ報告されているが、
それらの動物が身のまわりから失われたときに、
人の心にどんな変化が起こるのか。
形のあるものがないものから生まれるという
自然の脅威に目を凝らして、身のまわりの自然を見つめ、
、ありふれたものが、ありふれて在る尊さを、
小さな野生動物からのメッセージとして胸に刻む。
心の故郷が失われてしまわないうちに・・・

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)

 

 

 

 

庭園長のガーデニング・エトセトラ⑶ みどりがさきで、ひとがあとで。<

最初の植物は、いつごろ、どこで誕生したのでしょうか。
いちばん古い化石は、南アフリカのトランスバールからの
出土で、34億年前のものだとか。大きさは、0.1ミリ程度。
顕微鏡でしか見えないような小さな細胞ひとつからできていました。
それでもちゃんと光合成をすることができたというから驚きです。

それからさまざまな進化を経て、約4億7千万年前には、
コケのような最初の植物が、海から上陸。
約3億8千万年前には、アーキオプテリスという最初の樹木が出現。
約1億4千万年前の中生代白亜紀初頭には、シダ類や裸子植物、
種子植物などが繁茂していました。
その1千万年後には、被子植物が出現しています。

花を持った植物が地上のどこで、いつ最初に出現したか、
その解答については、現在も得られていませんが、
白亜紀(1億3500万年〜6500万年前)のこと
だと考えられています。恐竜も花を見たのでしょうね。

恐竜が現れたのは約2億年前。人類が誕生したのは約4百万年前。
植物の歴史がいかに古いものかがわかります。
また、植物の出現があるからこそ、恐竜も私たちも、
多様な生命が地球に誕生することができたのです。
今後もそれは変わりません。

みどりがさきで、ひとがあとで、
みどりがなければ、ひとは生きていけない・・・
そんなあたりまえの地球の常識を、
私たち人間は無視しようとしています。

ガーデニングとは、心を耕すこと、
地球を耕すこと。みどりの種を蒔くこと。
未来のいのちをはぐくむこと。
みどりを愛するガーデナーが、ひとりでも多く
増えることを望みます。

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)

 

 

 

 

庭園長のガーデニングエトセトラ⑵ 生命と土の46億年ストーリー<

植物はえらい! すごくえらい!! ものすごくえらい!!!
地球の自然環境を支え、整え、すべての生命を
養っているのは、植物なのです。

植物は、光合成を行い、太陽エネルギー(光)と
水や土から有機物をつくりだし、すべての動物に
生きていくためのエネルギーを提供しています。

また、温暖化の要因である二酸化炭素を吸収し、
酸素を放出するのも、植物の役割。
つまり、生態系の土台となっているのが植物なのです。

植物が、私たちのかたわらに存在することよって、
私たちはおおいにリラックスし、感動し、癒される・・・
さらに、花やみどりを見ることで、私たちは、
ストレスや緊張を軽減することができます。

私たちの本能が、植物を希求しているのでしょう。

地球の歴史は、約46億年・・・
地球に生物が出現してからは、40億年・・・
陸に進出してからは、約5億年・・・

現在の苔のような最初の植物が初めて上陸を果たし、
それからシダ類が出現し、3憶8千年前には最初の樹木が出現。
そして、こうした生物の遺体と、それらが分解されて生成された
化学物質が蓄積されて、土壌が形成されていったのです。
結果、陸の栄養が海に流れ、海の生物が育まれていきました。

生命はめぐりめぐっています。
その根幹をなすのが植物。
1億5千年前には、花を咲かせる被子植物が登場。
白亜紀中期の、恐竜が闊歩していた時代のことです。

現生人類であるホモ・サピエンスの登場が約30万年前。
約4万年前までには、ホモ・サピエンスは日本に到着
していたと推定されています。

ところで、古代日本ではどうだったのでしょうか。
日本書紀には、神々の母であるイザナミノミコトは、
火の神カグツチノミコトを産んだ際に灼かれて亡くなった後、
花の窟に葬られ、人々は季節の花を供え祀ってきたとあります。

漁労から、植物栽培を行い、家畜を飼うようになって、
自ら食料を生産するようになって1万2千年・・・
日本の農業やガーデニングのルーツもこのころのことでしょう。

縄文時代にはすでに稲作がおこなわれており、
弥生時代には、農耕が安定的に行われていたようです。

人間もまた死後は、土に還ってゆきます・・・
そのいのちの終焉に、美しく芳しい草花や薬草をたむける・・・
それは、私たちのDNAレベルでの記憶がなせる土へも邂逅・・・

そんなことを考えると、ますます植物がいとおしく感じられます。

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)

 

大阪・関西万博、4月13日オープン! テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」<

2025年4月13日(日)、大阪・関西万博がスタート!
コンセプトは、人間一人ひとりが、自らの望む生き方を考え、
可能性を最大限に発揮できるようにするとともに、
こうした生き方を支える持続可能な社会を、
国際社会が共創していくことを推し進めること。

この日、未来の種は、蒔かれました!
万博には、ヒト・モノ・文化を呼び寄せる求心力があります。

さて、日本が初めて万博に参加したのは、1867(慶応3)年。
フランス皇帝ナポレオン三世からの招聘による、
第2回パリ万博のこと。茶や陶磁器や浮世絵などが出品され、
これが、ヨーロッパにおけるジャポニスム、
日本ブームの契機となったのです。

そして1873年ウイーン万博では、明治政府がはじめて
正式に参加を表明。浮世絵、錦などの染織品、
漆器、櫛、人形などの工芸品をはじめ、国宝級の
宝物や陶磁器などの美術用品、生活雑器なども展示されました。

さらに1,300坪の敷地に神社と日本庭園を造り、
白木の鳥居、奥に神殿、神楽堂や反り橋などを配置しました。

これらの選定はオーストリアの公使館員・シーボルトが行い、
ドイツ人ワグネルの指導によるものでした。
ワグネルは、日本的で精巧な美術工芸品を中心に
日本全国から優れた工芸品を買い上げました。

結果、神社と日本庭園は大評判となりました。
皇帝フランツ・ヨゼフ一世と皇后エリーザベトも来場し、
開催後に完成した反り橋の渡り初めを行いました。
万博終了後、イギリスのアレキサンドル・パーク商社が
日本庭園の建物をはじめ木や石の全てを買いあげました。

こうしてジャパネスク・ガーデニングはヨーロッパに紹介され、
一大ブームを形成することになります。
ともすれば、現在、海外のガーデニングデザインに
注目が集ま異がちですが、万博のこの年、原点に還り、
もう一度日本庭園のよさを見直すのもいいと思います。

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)