朝晩寒いなと、カーデガンをはおりたくなる季節ですね。
そんなとき、心のなかにぽっとあかりを灯すように
想いだして、棚に飾るのが❝スノードーム❞です。
スノードームの起源は、1878年のパリ万博での出品といわれ、
ペーパーウエイトとして制作されたものでした。
その後の1889年のパリ万博では、エッフェル塔のスノードームが
つくられ、これが世界中に広まるきっかけとなりました。
このころのパリでは❝ジャポニスムブーム❞が高まっていて、
日本から出品された美術品は、大きな評価を得ています。
また、茶室や日本庭園を持つ日本式家屋も注目を集めました。
同じ時期にイギリスでは、アーツ・アンド・クラフツ運動が
盛んになり、中心人物であったウイリアム・モリスも、
日本の文化や伝統、禅、自然、食事などから影響を受けて
独自のデザインを作り上げました。
運動に共鳴した美術工芸家・ガートルード・ジーキルは、
そのご、園芸家として活躍し、色彩計画をもとにした
コテージガーデンなどの植栽設計を確立していくことになります。
これが、ボーダーガーデンブームのさきがけともいわれています。
こうしたヨーロッパの同時代に、スノードーム、ジャポニスム、
日本庭園、イングリッシュガーデンなど、ヨーロッパで美の
饗宴が繰り広げられ、日本文化もそれらに少なからぬ影響を
及ぼしていたなんて、とても素敵なことだと思えます。
スノードーム・・・透明なガラスの球体のなかの小宇宙。
振ると、ハウスやクリスマスツリーに降り積もる雪。
同時に、美の歴史も私たちの周囲に降り積もっていくようです。
イギリスでは、ガーデニングは芸術の範疇だとか。
ガーデニングを通して、その一端にいることを嬉しく思います。
庭園長 国司 淑子(くにし としこ)