庭園長のブログBLOG

庭園長のガーデニング・エトセトラ(24)~❝ガーデニング❞の流行・変遷をふりかえる~

2025.8.18

NHKの長寿番組「趣味の園芸」の放送が始まったのは、
1967(昭和42)年のこと。四季の草花、観葉植物、
花木、盆栽などの管理や手入れなどがテーマだった。

30年を経て、1997(平成9)年、❝ガーデニング❞が
流行語大賞に選ばれ、ガーデニングブームを仕掛けた雑誌、
「私の部屋ビズ(BISES)」の八木波奈子編集長が受賞した。
これをきっかけに、❝ガーデニング❞という言葉が広く
一般に知られるようになっていく。

ビズ1997年春号の特集は、イギリスの『イエローブック物語』。
英国ザ・ナショナル・ガーデンズ・スキームの総裁である
エリザベス皇太后の写真が特集の巻頭を飾った。
イエローブックは、イギリスのオープンガーデンを紹介する
冊子の通称で、収益は医療系慈善団体に贈られ活動を支えている。

以後、日本でイングリッシュガーデンブームが巻き起こる。
これをきっかけに、イギリスのガーデニングショーや、
オープンガーデンを巡る、英国ガーデンツアーもブームとなる。

さらに25年を経て、イングリッシュガーデンブームは落ち着き、
2017(平成29)年、ビズはその役割を終え、休刊となるが、
❝ガーデニング❞は、ブームを越えて定着していくことになる。

一方、オランダのミーン・ルイスやピート・アウドルフの登場で、
自然の風景を再現したダッチ・ガーデンムーブメントが起こる。
その土地に自生する植物や宿根草を中心とした自然な庭づくりで、
枯れた姿にも生命循環の美をみいだす革新的なアイデアが、
世界的な評価を得るようになっていく・・・。

コロナ禍を経て、ライフスタイルの変化に伴い、このころから、
モンステラなどの観葉植物やインドアプランツに関心が移るとともに、
猛暑や乾燥に強く、ユニークなフォルムの南半球プランツなどの
人気がどんどん高まり、今日的で多様な植物ブームが
かたちづくられていく・・・。

さて、日本の気候区分が温帯から熱帯・乾燥帯へと移行しつつある
現状のなかで、❝ガーデニング❞はどこへ向かっていくのか、
ガーデナーは、植物とのかかわり方をどう提案していくべきか、
いまいちど原点にたちかえって、
見つめなおすときがきているように思う。

未来へ。❝ネオ・ガーデニング❞という種蒔きをしていこう。

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)