私たちの美意識って、どのように培われてきたのでしょうか。
幽玄、侘び寂び、陰翳礼讃、静寂、余白の美、暗示、簡素・・・
完全さよりも、そこに至る過程や刻の流れの痕跡こそが美・・・
そういった、日本独自の感性がベースにあるように思えます。
いいかえれば、不完全さの肯定であり、ときを味方にした、
風化の美学ということでしょうか。
フランスなどヨーロッパには、❝パティナ❞という言葉があり、
「美しき経年劣化」とか「古色」などと訳されます。
ものの表面に、歳月を経て現れる自然な変化や風合いのこと。
それは、ものたちが生きてきた、ときの流れの証・・・。
ヨーロッパのアンティークにも、風化の美学があるのです。
古いものにこそ価値があるという文化、
ともすれば現代の日本人は、新しいものや若さに価値を見出し、
古いものや年齢を重ねた人たちを軽視しがちです。
人それぞれに重ねた時間があり、
エイジングやヴィンテージのアイテムは、
独特の深み空気管感与えてくれます。
完璧じゃないからこそ、美しい。
新品じゃないからこそ、愛おしい。
よい歳を重ねたからこそ、尊い。
アンテイークなものもひとも、味わい深い。
そんなことを想う「敬老の日」です。
庭園長 国司 淑子(くにし としこ)