庭園長のブログBLOG

庭園長のガーデニング・エトセトラ(32)~1867年のイギリスとフランスと日本と薔薇と~

2026.10.25

世界で最も愛され、花の女王の地位に君臨するのは、
バラ・・・
約7000万年前から3000万年前に、ヒマラヤ山脈周辺で
誕生したといわれています。

メソポタミア文明では、バラの遺物や花束が発見され、
女神イシュタル(イナンナ)像はバラを手にしています。
エジプト文明でも、バラの花束の遺物が出土しています。
ギリシャでは、クノッソス宮殿の壁面にバラが描かれています。

ちなみに日本では、兵庫県明石市で、
約400万年前のバラの化石が発見されています。

その栽培の歴史は、紀元前500年ころにさかのぼります。
最も古い記録は、古代中国・周王朝の宮殿の庭。

やがて、シルクロードならぬローズロードを通って、
中近東からヨーロッパに伝わったバラは、
貴族の贅沢品や趣味として、栽培が盛んになっていきます。
大航海時代には、中国や日本などのアジアで栽培されていた
バラがヨーロッパにもたらされ、人工交配によって
新しい園芸品種が生み出されていきました。

1867年は、バラの歴史上のターニングポイントの年。
それ以前のオールドローズと、それ以後のモダンローズを
分ける園芸品種「ラ・フランス」が、フランスの
ジャン・パブテイスト・ギヨーによって作出されました。

豊かな香りで美しい花姿ながら春しか咲かないオールドローズ
に比して、大輪・美形・芳香・四季咲き性をもつ、
完璧なモダンローズの登場です。

1867年の大転換後、
バラ栽培は、イギリスでは独自の発展を遂げていきます。
ヘンリー・ベネットが牛の繁殖技術を応用して、
バラの育種に初めて科学的な」人工交配を導入。
イギリス製のモダンローズを発表していきます。

20世紀に入ると、デビッド・オースチンが、
モダンローズとオールドローズ双方の長所を合わせた
イングリッシュローズシリーズを完成させます。

人間の、美しいものを愛で育みたいという想いは,
どうやら、今も昔も変わらないようですね。

1867年は、日本では江戸末期の慶応3年にあたります。
大政奉還の年で、翌1868年が、明治元年にあたります。
明治期に、「ラ・フランス」は日本にもたらされ、
文明開化とともに、「天地開」という名で、
バラの新たな歴史を刻んでいくことになります・・・。

庭園長 国司 淑子(くにし としこ)