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庭園長のガーデニング・エトセトラ(6)粘土はいのちのゆりかご

2025.6.22

地球にあって、月と火星にないもの・・・。
それは・・・「土」。
月や火星では岩が風化して砂や粘土の堆積層(レゴリス)は
つくられるが、「土」にはなれない。

地球では、岩石からつくられた粘土や砂の上に、
植物や動物が死ぬとどんどん堆積し、微生物やミミズなどが
分解して混ざり合い、土が形成される。

では「粘土」は・・・
「粘土」という言葉でイメージするのは、粘土遊びで
お人形や動物をつくることや、ろくろを回す陶芸など。
では、ガーデニングにおける「粘土」の役割とは・・・

「粘土」は、土の中に存在しています。
土とは、土粒子、水、空気から成り立っています。
土粒子は、粘土、シルト、砂、礫と、
大きさによって名前が変わっていきます。

粘土は、直径が0~0.002mm以下で、
岩石に含まれるケイ素、アルミニウム、鉄などが、
雨に溶けだして再結晶化したもの。

そのため粘土は、マイナスやプラスの電気を帯びており、
表面積がとても大きいのが特徴で、
植物の生育に下記のような大きな役割を果たしています。

①養分の貯蔵庫
植物の養分は、アンモニウム、カリウム、硝酸、
リン酸などイオンの状態で存在しており、これらを
電気的な力で保持することで、雨などによる流出を
防ぎ、土を肥沃にしています。

②水はけ、水もちの保持
植物の根は、水や、水に溶けた養分の吸収や、
呼吸などを行っています。そのため団粒構造が必要で、
大きな間隙と小さな間隙のバランス形成に粘土が
大きな役割を果たしています。

③土の科学的緩衝作用
土が酸性化すると、植物の生育を阻害する
アルミニウムが溶け出す原因になります。
粘土は、pH(水素イオン濃度)の急激な変化を抑える
働きをしており、アルミニウムの流出を抑制します。

「粘土」は、生命を生み出す触媒・・・。
「粘土」て実は、ガーデニングの隠れた主役だったのです。

庭園長 國司 淑子(くにし としこ)